何が起きアントシアニン

 何が起きたのか分からなかった亜鉛 の サプリ
 ちりちりと何かが焼けこげているような熱と臭気に包まれながら、それを呆然とdha見上げる。
 熊達の首から上が吹き飛んでいた。
「そのまま伏せていろ」
「ひぇっ」
 声と共に熱波が頭上を掠める。おそるおそる顔を上げると、残りの熊達の首も跳ね飛ばさdhaれているところだった。
「……くびちょんぱだ」
 どさどさと音を立てて首なしの遺体が目の前に積み上がる。
「無事か?」
 その悪夢のような光景を一瞬で作り上げた人物は、状況にそぐわぬ落ち着いた声でのんびりと聞いてきた。一応疑問形はとっているがその口調は無事を確信している。
「……レオンハルト様」
 そこにはまごうことなき最強の精霊亜鉛 サプリ騎士の姿があった。

「どうしてここに……」
「うん?時々様子を見に来ると言っただろう」
 差し出された手をとり立ち上がる。どうやら彼は忙しい仕事の合間を縫ってミモザの様子を見に来てくれたようだった。
 てっきりミモザのことなどもう忘れてしまったか相手をするのが億劫になってしまったかと思っていたので驚く。その表情からこちらの気持ちを察したのだろう。レオンハルトは少々気分を害したように眉を顰めた。
「別に忘れていたわけでも投げ出アントシアニンの効果したわけでもない」
「え、へへへ、もちろんです。そんなこと思ってませんよ!」
「まったく…、まぁ、出していた課題はきちんとこなしていたようだな」
 ミモザの服から出ている筋肉のついた腕や足を見て、「そこは褒めてやろう」と鷹揚に頷いた。
「そこに着けたんだな」
  ふと気がついたように彼が言う。視線を辿るとそれはミモザの首元、レオンハルトにもらった黄色い宝石のついたリボンに向いていた。
「ああ」と頷いてミモザは遠い目になる。大変だったのだ、色々と。
 最初は見えないように服の中、腕や足につけようとした。なぜならこんな高価そうなものを持っていれば母や姉に何かを言われゴーヤることは必至だったからだ。
 しかしこの魔導具、どうやらこの宝石部分を隠してしまうと効果がないらしかった。そのためなんとか目立たず宝石が隠れない場所を模索したが、そんな場所は思いつかなかったのである。
 仕方なくレオンハルトを真似して髪につけようとして、髪が短くて断念した。次に腕につけたがいつ汚れるか壊してしまうかとハラハラしてしまい落ち着かず、最終的に落ち着いたのが首にチョーカーのように巻くという現状である。
 当然のことながら、母には「そんな高そうなものどうしたの?」と心配げに聞かれ、姉には「いいなぁ、わたしもそういうオシャレなの欲しい」と詰め寄られた。
 それに対してミモザは「誕生日プレゼントにもらった」「これあんまり高くないよ!宝石じゃなくてイミテーションだって」で無理矢理押し通した。実は春生まれでレオンハルトに出会う1ヶ亜鉛の効果月前に12歳になったばかりだったミモザは「少し遅めの誕生日プレゼント」と言い張った。相手に関しては「時々遊んでくれる近所のお兄さん」だと母にだけこっそりと告げた。納得はしていないようだったがそれ以上は話したがらないミモザに母はひとまず様子を見ることにしたらしい。姉はあまり高価な物ではないと聞いて欲しがるのをやめた。元々レオンハルトが着けていただけあって男性向きのデザインのため好みじゃなかったのだろう。
「えっと、他につける場所が思いつかなくて……」
 しかしそれを言っても仕方がないのでミモザは前半部分だけを割愛して伝えた。
 レオンハルトはそんなミモザの様子に気づいていないわけではないのだろうが、「ふうん」と気のないふうに流す。
 そして手を伸ばしてリボンの位置をちょいちょいと直し始めた。どうやら熊とやり合っている間にズレていたらしい。それだけでは直らなかったのか、彼は一度結び目を解いて綺麗に巻き直してくれた。
 巻き直すために顔が近づき、長い藍色のまつ毛が伏せられているのが間近に見える。
「よし。ああ、よく似合っているな」
 巻き終わったのかそのまま顔を上げ亜鉛 サプリて彼が微笑んだ。
「……はぁ、どうも」
(ドアップに耐えうる美形すごいな)
 そして紳士である。初対面の時は垂れ流しになっていた黒いオーラが今は見えないため、さらに美形に拍車がかかりその顔はきらきらと輝いて見えた。
 リボンに手で触って確認するとミモザが巻いた時よりもずっと綺麗に結ばれているように思う。
「前回会った時、落ち合う場所を決めていなかっただろう。君と初めて会った場所に行けばいいかと思っていたら、大量の野良精霊が村に向かって走っているじゃないか。放っておくと障りがありそうだったからそいつらを片付けながら様子を見に来たら君がいたんだ」
 そのまま素知らぬ顔で彼は話題を戻した。惚けていたミモザは一瞬話題についていけずぱちぱちと瞬く。そんなミモザには構わず「まさかこの森でもこんなことが起きるとはな」とレオンハルトは続けた。
「この森で『も』?」
 その言葉に引っかかりを覚えてミモザは首をひねった。それを横目でちらりと流しみて「ああ」と彼は頷く。
「数はそう多くないが他の場所でも同様の事例が見られていてな。なんの前触れもなく局地的に狂化個体が大量発生するんだ。その対応と原因調査でなかなか手が離せなかった」
「原因、わかったんですか?」
 彼は亜鉛 の サプリその質問には答えず肩をすくめてみせた。わからなかったということだろう。
(ゲームの状況と似てる)
 主人公のステラが最終的に聖騎士の地位を賜ることになる事件。あれは確かボス精霊が狂化したことによる暴走を止めるというものだったはずだ。そしてその前兆は主人公が故郷を旅立った頃からすでに見られていた。
 この3つ目の熊はその前兆のうちの一つだ。
(ゲームが始まる前からすでに前兆があったのかな)
 もしくは本当に展開が早まってしまっているのか。
 いずれにしても、ゲームでその原因が語られていたのかどうかすらミモザには思い出せなかった。
「随分と頑張ってくれていたね」
「え?」
 思考の海にもぐっていたミモザはその声に我に返る。見上げるとレオンハルトは微笑んだ。
「君がここで抑えてくれていたから俺が間に合った。君がいなければ村に被害が出ていただろう」
「そんなことは……」
「あるさ。謙遜は美徳だが卑屈は害悪だ。自身の功績は素直に誇りなさい」
 そう言って背中を叩く手は力強く、ミモザを明るい方へと後押しするようだ。
「あ、りがとう、ございます」
 胸が熱くなる。涙が溢れそうでミモザは俯いた。
 努力を認められるということがこんなに得難いことなのだと、生まれて初めて知った気がした。
「さて、俺はもう少し奥の方を調べてみるつもりだが、君はどうする?」
「ご一緒させてください!」
「足を引っ張るようなら置いていくぞ」
 意ゴーヤ気込むミモザにレオンハルトは笑顔で釘を刺す。
 わりと本気の声音だった。

 結論から言うとまるで原因となるようなものは見つからなかった。
 先ほど暴れ回っていた熊達が寝ぐらにしていたのであろう巣穴は見つかったのだが、レオンハルトによるとその巣穴自体にも周辺にも特に狂化に繋がるような不自然な点は見当たらないらしい。
「基本的には野良精霊が狂化することは非常に少ないんだがな」
「そうなのですか?」
「ああ、通常狂化というのは人間の感情に引っ張られてなるものだ。抑圧されたストレスが爆発する形で起こる。しかし野生動物はストレスが加えられても抑えるということをせずその場で威嚇という形で発散するものだ。よって狂化しにくい」
「それは…、野生動物でも追い詰められるような状況に長くさらされれば起きるということでしょうか」
 ミモザの鋭い指摘に意外そうにひょい、と眉を上げてレオンハルトは頷く。
「そうだな。そう考えてもらっていい。多くは自然災害や人間が住み家に踏み入り荒らすことで起こる。しかしこの場所は平和そのもので災害などが起こった痕跡も森が開拓された様子もない」
 これは他の場所と同じくこれ以上探っても何も出ないだろうな、とレオンハルトはぼやいた。
「それって……」
 言いかけたミモザに、皆まで言うな、と彼は手を振る。
「推測の域を出ん。迂闊なことは言うものではないよ」
 そのセリフが彼もミモザと同じ可能性を思い浮かべているのだと物語っていた。
 天災でないのならばこれはきっと人災だ。レオンハルトが何件も調査していずれも痕跡がないというのならば、それは意ゴーヤ チャンプルー図的にその痕跡を隠蔽しているとしか思えない。
 誰かが人為的に狂化を起こしている。
 単純に人知れず虐待などを行った結果として偶然狂化が起こっているのならばいいが、狂化を起こすことを目的としていた場合は厄介と言うより他にない。
「まぁ、この話はここまでだ。時間もないし本題に入るとしようか」
「本題?」
 首を傾げるミモザに「何のために俺がここに来たと思っている」と彼は呆れたように言った。
「君の修行をつけるためだろう」
「あ」
 すっかり頭から抜けていた。そんなミモザに彼は再びため息をつくと、
「ところで自己紹介を忘れていた。俺はレオンハルト・ガードナーという。守護精霊の名はレーヴェ。君の名前は?」
 となんとも今更なことを聞いてきた。
「えっと、有名なので存じています。ミモザと、この子はチロです……」
 ミモザもすっかり忘れていたので人のことを言えなかった。
マカ サプリマカ サプリアントシアニンゴーヤ チャンプルー

「ミモザ!」  喜亜鉛 サプリ おすすめ

「ミモザ!」
 喜色をにじませた声でステラが名前を呼んで立ち上がる。そゴーヤ チャンプルーの瞳はきらきらと輝き、頬を紅潮させて笑う姿は相アントシアニンの効果変わらずうっとりするほど美しかった。それに若干げんなりしつつミモザは首を横に振る。
「話は聞かせてもらった。けど薬草の採取は種類に厳密な制限があるし、塔の外に持ち出す行為は禁止だよ」
 本当は何も言クロムわずに立ち去りたかったが、聖騎士の弟子という立場上、犯罪行為に対して忠告くらいはしないと世間体が悪い。
 ミモザのその忠告に、ステラは悲しそうに眉根を寄せた。
「どうしてそんな意地悪を言うの?この子が可哀想だとは思わないの?」
「可哀想だったら何をしてもいいわけじゃない」
 ミモザは上げていた手を下ろした。そして幼いながらに横槍を刺したミモザのことを強く睨みつけてくる少女のこゴーヤ チャンプルーとをちらりと見る。
「薬草の数は限られている。取り過ぎれば当然絶滅してしまうから採取量は制限されているし、採取されて薬になって以降は優先順位を医者と国が判断して必要性の高い人に優先的に分配されるように管理されている。それを無視して掠め取る行為は犯罪だし、なにより他の順番を待っている人達に対する裏切りだ」
 それはステラというよりは少女に向けて言った言葉だった。彼女は気まずげに俯くが、すぐにまた顔を上げると「でも」と言い募った。
「でも、お母さんの病気が悪化したら……っ」
「医者はしばらくは大丈夫だと言ったんでしょ?」
 ぐっ、と少女の言葉が詰まる。ミモザはその様子にため息をついた。dha
「おおかた、お姉ちゃん以外の人にも頼んで断られたんじゃないの?今僕が言った理由で」
「え?」
 驚いたようにステラが少女を見る。少女は図星だったのか気まずそうに身じろぎをした。
「そりゃあ皆断るよ。バレたら大変だし君の言っていることに理はない。多少同情の余地があるとはいえ君のただのわがままだ。そんなことに自分の人生を賭けるような真似、まともな神経ならしないよ」
「でも……」
 ここまで言っても諦めきれない様子の少女に、ミモザは容赦をやめて言葉の切先を突きつけることにした。
「なんで君がやらないの?」
「………っ」
「第2の塔は攻略したんでしょ。なら第3の塔にも自分で入って自分でやってくればいい」
 少女は俯く。ミモザは近寄ると彼女の顎に手をかけて上を向かせ、逃げることは許さないというように無理矢理目線を合わせた。
 彼女の瞳をその湖のように深い瞳で覗き亜鉛込む。
「それをしないのは怖気付いたの?それとも何か他の理由かな。わからないけどさ」
 少女の目には怯えが浮かんでいた。そのまるで被害者のような表情に腹が立つ。
「自分の欲望のために罪を犯すというのなら、人に押し付けないで自分でしなさい」
 ぼろぼろと彼女の瞳から大粒の涙がこぼれた。それを無表情に見下ろして、ミモザは顎を掴んでいた手を離した。
(さて……)
 言いたいことも言わなければならないこともとりあえずは全て伝えた。あとはもうミモザの仕事ではない。そそくさとその場を立ち去ろうとするミモザのことを、しかしステラは許さなかった。
 ミモザの前へと立ち塞がり、両手を広げて逃がさないと言わんばかりに睨みつける。
「どうしてそんな酷いことを言うの?この子はここまで頑張ってきたんだから、その努力は褒められるべきことだわ」
 ミモザはため息を吐く。うんざりと髪をかき上げた。
「褒めるだけでいいならいくらでも褒めてあげるよ。ここまで来た根性は認める。でもそれとルール違反をしてもいいかどうかは別の話だよ」
「ルールルールってそ亜鉛 の サプリればっかり!ミモザには人の気持ちがわからないの?」
 その言葉にミモザは鼻白む。とんだ言われようである。
「規則は守らないと国も世界も成り立たなくなっちゃうよ。なによりきちんとルールを守っている人が損をしちゃうのはダメだ」
 けれどただちにその場を立ち去りたい気持ちになんとか蓋をして諭すように話しかけた。しかしステラは拒絶するように首を横に振る。
「人それぞれ事情があるじゃない」
「黙って従ってる人にも事情はあるよ」
「……決めた」
 何を、と問いかける時間は与えられなかった。ステラの目が何かを覚悟したようにきらめき、ミモザのことを射抜く。
「ミモザ、わたしと勝負をしなさい。そしてわたしが勝ったら彼女に薬草をあげるのをこれ以上邪魔しないで」
「犯罪を容認しろってこと?」
 そんなのはダメだよ、と言おうとして急に頭痛に襲われてミモザは黙り込んだ。
(これは……)
 くらくらと目眩がする。既視感がミモザを襲ってくる。
(妨害イベント……)
 仕掛けてくるのはステラからとゲームとは逆になっているが、今この場面は確かに『ステラ達が塔に入るのを邪魔する』というミモザの妨害イベントそのものだった。
(これを止めようとしたのか、ゲームゴーヤ チャンプルーの『僕』は)
 薬草を無許可で採取しようとするステラを止めようとして次の妨害イベントは起きたのだ。
「ミモザ」
 黙り込んでいることを了承と取ったのか、ステラはティアラをレイピアへと変えて構えて立った。
「勝負よ!」
 その澄んだ真っ直ぐな眼差しに、ミモザの頭痛は増した。
dhaアントシアニンサプリメント マカ

 天高く掲げクロムの効能

 天高く掲げられたレイピアが振り下ろされる。
マカ と は(まずい……っ)
 ミモザはとっさに防御形態を構えた。間一髪、そのレイサプリメント マカピアから放たれた光の帯がチロの盾へとぶつかり爆ぜる。
「ぐ……っ!」
 その攻撃の重さにうめく。彼女の最強の魔法、光線銃(レーザービーム)だ。
 この魔法は主人公であるステラの必殺技であり、クロムの効能MPの消費量と溜め時間の長さによって威力の上がる技である。ゲーム中の戦闘場面で使うものは威力が少なかったが、ボス戦などのイベントでとどめを刺すモーションの際のアニメーションで使用される時の威力はとんでもなかった。だいたいは仲間の男性勢がステラが溜める時間を稼ぎ、技を放つ、といったパターンだ。それはそれは巨大な精霊の胴体に風穴を開けるぐらいとんでもなかった。普通にミマカ サプリモザが食らったら死ぬし卒業試合なんかで出していいものではない。
(う、撃ちやがった……)
 ミモザが防げなかったらどうしていたのだろう。きっと今頃スプラッタな光景が校庭には広がっていたはずだ。まぁそれを言ったら卒業試合そのものが物騒極まりないが、しかし使われる技の多くは寸止めが可能であるかあたっても死なない程度のものに配慮されている。
 ちらり、とミモザが審判の教師を見ると彼はちょっと顔を引き攣らせて引いていた。引くくらいならば止めて欲しい、切実に。
 正直、王都の御前試合ならともかく、今回クロムの効能の試合では出てこないと思っていた技だ。
(これは早々に片をつけないとダメだ)
 じゃないと死んでしまう、ミモザが。
「すごいわミモザ。簡単に防げてしまうのね」
 周囲に花を飛ばして無邪気に笑う姉に、ミモザはぞぞっと身を震わせた。ミモザがうっかり死んでしまっても「あら死んじゃったわ、ごめんなさい」で済まされてしまいそうな恐怖を感じる。
(さすがにそんなことはない……、よね?)
 チロはそんなことあるだろボケェ、とメイスの姿のまま身を震わせてミモザに訴えてきた。
 ふぅ、と自分を落ち着かせるように息を吐く。そしてその深い湖面のような瞳で、ミモザは冷静にステラのことを見据えた。
 ミモザに勝機があるとすれば、それは一つだけだ。
 それはーー、
「筋肉こそ!最強!!」
 気合いと共に一気に距離をつめマカ と はる。氷の破片が襲ってくるが、それを避けることはせず、全てメイスで叩き壊した。長距離戦では勝ち目がない。勝つためにはなんとか近距離戦に持ち込まねばならない。ステラもミモザの狙いを悟ったのか氷を放ちながら距離を取ろうと動くが、遅い。ミモザはずっと鍛えてきたのだ。
 筋トレを欠かさず行ってきた。走り込みだって毎日続けている。そして戦闘経験ならば圧倒的に積んでいる。その分の筋力が、速度が、判断力が、ミモザにはある。
 ミモザはそのまま懐へと飛び込むと、メイスでレイピアを殴りつけた。ただでさえ重量級の武器である。遠心力で勢いがついているし、なによりも、
「筋トレの成果を見よ!」
 ステラよりもミモザのほうがマッチョである。
 ステラが防御形態を展開しようとするが、もう遅い。
 ミモザはステラのレイピアを殴り飛ばした。
「……いっ!」
「筋肉の、勝ちだーっ!!」
 レイピアが空を飛ぶ。姿勢を崩し、動揺してそれを目で追うステラの喉元にミモザはメイスを突きつけた。
「…………っ」ゴーヤ
「しょ、勝者、ミモザ……」
 審判の声は半信半疑だった。誰もがステラが勝つと思っていたのだ。まさか落ちこぼれで不登校なミモザが、優等生のステラに勝つだなんて誰が想像しただろうか。
「お姉ちゃん」
 はぁはぁと息を整えながら、いまだに呆然と吹き飛ばされたレイピアを眺めるステラをミモザは呼ぶ。
 彼女は信じられないという表情で、ゆっくりとミモザを見上げた。
「僕の、勝ちだよ」
 じわじわと、笑みが口元に浮かぶ。口にした途端、勝ったのだと実感した。
「僕はアベルを許さない。だからお姉ちゃんはそのことに今後一切、よけいな口を挟まないで」
 青空を背に、満面の笑顔を浮かべる。それは先ほどまでステラが浮かべていたひまわりのように無邪気な笑顔とは違う。
 邪気を孕んだ、けれど棘を身に纏う薔薇のように、あでやかな笑みだった。

 ミモザは優勝した。
 全校生徒が並ぶ中を、優勝トロフィーを受け取るために悠々と歩く。
 並んでいる中にはアベルはもちろん、他にもミモザをいじめてくれた奴らや無視していたクラスメイト達が整列していた。
 それを横目で見つつ、ふん、と鼻を鳴らす。
 壇上にたどりマカ サプリ着くと校長が微妙な顔をして木製の小さな優勝トロフィーを持って待っていた。さもありなん。不登校児が優勝するなど前代未聞だろう。
「えー、では、優勝トロフィーを授与する。ミモザ君」
 ごほん、と咳払いして校長はトロフィーを差し出した。
「優勝おめでとう」
「ありがとうございます」
 ミモザは綺麗に礼をして優勝トロフィーをー…、受け取らなかった。
「辞退させていただきます」
「……は?」
 にっこりと、惚ける校長に微笑みかける。生徒や教員も含め、周囲が騒つくのがわかった。
「僕はこの学校に少ししか通っていません。そんな人間にこのトロフィーはふさわしくないでしょう」
 ミモザの発言にますます喧騒が広がる。
「あ、あー、ミモザ君、そのようなことは……」
「ですのでこのトロフィーは、繰り上げで準優勝のアベルに譲りたいと思います」
 どよめきの声が上がった。
(そりゃあそうだ)
 ふふふ、とミモザはほくそ笑む。
 ミモザとアベルの事件については皆知っている。その被害者が加害者にトロフィーを譲ろうというのだ。ミモザは戸惑う校長からトロフィーと、ついでに卒業証書ももぎ取ると、そのままスタスタと壇上を降りてアベルの元まで行った。
「ミモザ……」
「あげる」
 なかなか受け取ろうとしないアベルに苛立ち、そのままトロフィーを無理矢理押し付ける。
 ふん、と鼻を鳴らす。格下と侮ってポリ ペプチドいた相手に勝ちを譲られるというのは一体どんな気分だろうか。
 決勝で戦ったアベルのていたらくといったらなかった。直前の会話に動揺したのか、あるいはステラが負けたことがショックだったのか、その両方か、アベルはろくに実力も出せずに敗北した。まぁミモザは今までの恨みを込めて遠慮なくぼこぼこに殴らせてもらったのだが。
 アベルはその瞳に戸惑いを浮かべたままトロフィーを持ち、「ミモザ、その……、これは……」としどろもどろに何事かを話している。
 その態度をミモザは、どうやら更生は順調に進んでいるのだな、とつまらない気持ちで眺めた。レオンハルトが非常に残念そうに伝えてくれたので疑ってはいなかったが、実際に見るとなるほど、しらけるものだ。
 どんなに真っ当になろうが善良になろうが、ミモザにとってクズはクズのままだ。行った行動はなくならないし今後の行動で帳消しになどなりはしない。しかしクズはクズらしくしてくれていた方が報復しやすいのは確かだった。下手に更生されてしまうと今度はこちらが加害者になりかねない。
(グレーなラインで攻めるしかないかぁ)
 どうやって報復してやろうかと考えていた内容を頭の中で整理する。とりあえず物理的に殴り返すというのは済んだ。あとはもう、まともになってしまったのならばまともなりに、罪悪感を一生感じて苦しんでもらうのが1番だろう。
 あれほど恐ろしかったアベルが、急に小者に見えた。なんだか馬鹿馬鹿しくなってミモザはアベルにぐいっと顔を近づける。
「み、ミモザ……っ」
「この学校の人達の評価なんて、僕は欲しくないの」
「……っ」
「偉そうにマカ サプリトロフィーなんて渡されたくないし、認めてもらいたくもない。加害者からは何一つ受け取りたくない。気持ちが悪いから」
 アベルにだけ聞こえる声でそう囁いて、そのショックを受けて青ざめた顔に満足する。
「だから、あげる」
 そう言って無言で立ちすくむアベルを放ってミモザは校門に向かって歩き出した。
 呼び止める声はあったような気もしたが幸い大きな声ではなかったので気づかないふりをした。もう二度くることもないだろうな、と大した感慨もなくミモザは学校を後にした。

「ミモザ」
 学校から出て家に向かっている途中、ふいに声をかけられる。一体どこからと周囲を見渡すと「こっちだ」と再び声がした。
「えっ、うわっ」
 ばさり、と大きな音を立ててそれはミモザの目の前に降り立った。それはレーヴェだ。
 黄金の翼獅子はその背に主人を乗せて空から舞い降りてきたのだ。
 彼は当たり前のような顔で守護精霊から降りるとミモザの前へと立った。
 長い藍色の髪がさらりと流れ、黄金の瞳が笑みを作る。
「レオン様、どうしてここに……」
「今日が卒業試合だと言っていただろう」
 平然と、彼はそれが当たり前かのように言った。
「どうだった? ミモザ」
「…………っ」
 ミモザの胸がじんわりと熱を帯びた。多忙な彼が、わざわざ会いに来たのだ。今日が卒業試合だというだけの理由で。
「勝ちました」
 ミモザは笑う。少し気恥ずかしさも感じながら、それでは言葉が足りなかったかと付け足す。
「優勝しました」
「そうか」
「でもあいつらが嫌いだったので、蹴っ飛ばして来ちゃいました」
 他の誰かに言えば、きっと咎められる行為だろう。大人げないだとか、試合とこれまでのことは関係ないだろうとか、きっと諭されるに違いない。
(けど、レオン様なら)
 ミモザには確信があった。彼ならきっ亜鉛の効果と、一緒に笑ってくれるに違いない。
 果たして彼は、
「そうか」
 もう一度そう頷くと、意地悪そうに口の端を上げてにやりと笑った。
「さすがは俺の弟子だ。よくやった」
「はい!」
 ミモザは満面の笑みで頷く。努力が報われた? それだけじゃない。ミモザと気持ちを共有してくれる人がいる。そのことがただただ嬉しい。
(きっと大丈夫だ。これからのこともきっとなんとかできる)
 だって、ミモザは卒業試合で初戦敗退どころか優勝し、ステラに負けるという運命に打ち勝ったのだ。
(レオン様がいてくだされば……)
 これからのゲームで起きる出来事もきっと変えられる。そう信じることが今のミモザには可能だった。
亜鉛dha epaゴーヤアントシアニン

 試練の塔、第1マカ サプリ

 試練の塔、第1の塔はチュートリアルの塔である。
 敵は一切出現しない。ただマップの見方dha epaや試練の塔の説明のためにあるような塔であるゴーヤ。そのためその試練の内容は至極簡単で子どもでもできるお使いのようなものだ。あちらこちらに隠されているはずの鍵を探して塔の最上部にある扉に挿す、ただそれだけである亜鉛 サプリ。ただし鍵は3種類ある。そう、金銀銅の3種類だ。そのうちのどの鍵を見つけられるかにより、祝福の精度が変わるのである。そして今、ミモザはーー
「銅しか見つからない……」
 大量の銅の鍵を抱えて途方に暮れていた。
 もはや疲れ果てて天を見上げる。そこにはやはり塔の中にも関わらず綺麗な青空が広がっていた。
「クソゲーめ……」
「チー…」
 チロが慰めるよゴーヤうにミモザの頬を撫でる。ミモザはその優しさに「うっ」と泣き崩れた。
 あたり一面には色とりどりの花畑が広がっていた。蝶々や蜂がぶんぶんと飛び交っている。その中で1人地面にへばりつくミモザ。
(悲しい……)
 いや、わかってはいたのだ。そうなるかも知れないと予測はしていた。
 しかし予測していたのと実際に起こるのとではやはり重みが違うのだ。
 通常確かに銅より銀の方が見つかりにくい。金など見つけられる人間は稀である。しかし銀は一般的に見つかる部類のはずなのだ。
 周囲を見渡せば銀の祝福を持っていdha epa dhaる人は普通にいる。特に騎士を目指すわけではない人でも普通に持っている。
 故にゲームのノーマルモードは銀で、ハードモードは銅なのだ。
「あの…、大丈夫ですか?どこかお怪我でも……」
「いやちょっと世界に絶望してただけなので大丈夫です」
「それは大丈夫なんでしょうか……」
 親切に声をかけてくれた人物はそこまで言って、「あれ?」と声を上げた。
「ミモザさん?」
「はい?」
 名前を呼ばれて顔を上げる。
「……何やってるんですか?本当に」
「僕の中の金髪美少女は地べたにへばりついたりしないんだけどな」と神妙な顔で呟くのは王国騎士団団長の弟子、ジーンであった。

「ミモザさん、まだ塔の攻略されてなかったんですね」
「そういうジーン様もですか?」
「ええ、僕は学園を先日マカ と はやっと卒業しましたので」
「なるほど」
 やっと地面にへばりつくのをやめてその場に座るとミモザは頷いた。それは実によくある話だ。
 塔の攻略は13歳以上ならば可能だが、本当に13歳を迎えてすぐに攻略に向かうのはだいたいが学校にもあまり通えないような貧困層である。なぜなら塔の攻略いかんによって就職先や給料が大きく左右されるからだ。
 一応この国ではどこに住んでいても学校に通い、基礎教育を受けられるように整備が進んできているが、無料というわけではない。国から補助金が出ているため安価ではあるが、それでも少しのお金でも切り詰めたい場合や子どもに働いてもらいたい状況の場合は通えない者も多い。レオンハルトなどはこの例である。
 対してミモザやジーンなど学校に通えている者は学校卒業後、つまり15歳に塔の攻略を始めることになる。これは当然、学校を卒業していた方が卒業していない場合よりもその後のマカ と は進路に幅が広がるためである。
(学園に通ってたならなおさらだろうな)
 学園といった場合に指し示すものは王都にある国立中央学園のことである。これは貴族の子息、子女が通う学校でミモザが通っていた学校など比較にもならないくらいのエリート校であり、そして国立にも関わらず非常に高い学費の必要な学校である。一応最近は特待生制度などができ、平民や貧しい人も優秀であれば通えるようになってきたらしいがまだまだ貴族のエリートが通う学校としての印象が強い。ここを卒業すれば国立中央学院という更なる叡智を学べる研究機関への道が開かれるのだ。当然、いつでも誰でも挑める塔の攻略などより学園の卒業のほうが優先されるだろう。王国騎士団団長の弟子な時点でエリートだとは思っていたが、彼はミモザの想像以上の超エリートだったようだ。
「僕も先日学校を卒業したので今日から攻略開始です」
「へぇ」
 ジーンは意外そうに相槌を打った。おおかたレオンハルトの弟子なので学校に行っていないと思われていたのだろう。
(まぁ、間違いではない)
 厳密には通っていない。不登校なので。
「そアントシアニンの効果ういえば……、先ほどミモザさんにそっくりの金髪美少女に出会ったのですが、お知り合いでしょうか?」
「えっ」
 のんびりと続けられた言葉にぎょっとする。ミモザにそっくりな人間などこの世に1人しかいない。
「確か名前はステラさんとおっしゃっていました」
「ど、どこで会ったんですか!?」
「え?ええと、王都の大通りで……、お買い物をされていたようで」
 その言葉にほっと胸を撫で下ろす。どうやらまだ塔に来ているわけではないらしい。なるべく鉢合わせたくないのだ。
「ええと、彼女は……」
「あ、僕の姉です。双子で」
「ああ、通りで。あんまりにそっくりなのでミモザさんかと思って間違えて声をかけてしまったのです」
 続けられた言葉にミモザは「ん?」と首を傾げる。どこかで聞いたことのあるような話だ。
 王都、知り合いと間違えて声をかける、エリート。
「攻略対象……?」
「はい?」
 思わず行儀悪く指差したミモザに、ジーンは不思議そうな顔をする。その顔をまじまじと見つめるが、正直まったく思い出せない。
 清潔に切り揃えられたサラサラの黒い髪に優しげな黒い瞳。爽やかな笑顔で立つその姿は、
(まぁ、イケメンといえばイケメン)
 攻略対象であっても不思議ではない。
 ゲームの攻略対象はレオンハルトと王子の隠しキャラ2人を除くと全部で5人。全クロム員所属する組織が違うのが特徴である。幼馴染のアベル、被害者遺族の会のマシュー、そしてあと出てきていないのは保護研究会と学園のエリート、大人枠の学院の教師である。
 特徴としてはジーンは十分に当てはまっている。ここまで共通項があれば彼が攻略対象とみて間違いないだろう。
(全く思い出せないけど!)
 まぁ、全ての記憶があるわけではないから気がつかなくてもしょうがない、と誰ともなしに心の中で言い訳していると、ジーンははぁ、と残念そうにため息をついた。
「ミモザさんって金髪美少女なのに、らしからぬ性格をしてますよね」
「最初に会った時も思ってましたがジーン様のその金髪美少女に対する歪んだ価値観は一体なんなんでしょう?」
 こてん、と首を傾げるミモザにジーンがむっ、と眉を寄せる。
「歪んでませんよ」
「歪んでますよ」
「美少女は巨乳なんて言わないし地べたに這いつくばらないんですよ、普通は」
「誰だって巨乳って言っていいし地べたに這いつくばる権利くらいありますよ?」
 そのまましばらく2人は見つめ合った。ややして「ああ」とミモザは納得したように頷く。
「もしかしてジーン様、あまり女性と接したことがないんでしょうか」
「は、はぁーっ!?」
 明らかに動揺したようにジーンは目を剥いて声を上げる。
「あ、ありますよ!先生は女性じゃないですか!」
「じゃあ同年代の女子と接した経験は?」
 彼はそっぽを向いてうつむいた。
「く、クラスメイトと」
「クラスメイトと?」
「あ、挨拶くらサプリメント マカいしたことあるし?」
「つまりそれ以外はないんですね」
「うぐぐっ」
 うめくジーンにミモザはさらに首をひねる。
「普通貴族って婚約者とかいるものなんじゃないんですか?」
「みそっかすの三男にそんなものはそうそういませんよ」
 むすり、と彼は不機嫌そうにそう告げた。
「親には好きにしろって言われてそれだけです」
「自由でいいじゃないですか」
「よくないですよ!三男なんてね!どっかいいとこに頑張って就職するか婿入りしない限り穀潰し扱いで家族に冷たい目で見られるんですよ!長男のスペアですらないから家に居場所がないんです!!」
 なかなか複雑な立場らしい。彼はぶつぶつと「女の子が欲しいから産んだのに男の子が産まれちゃった結果の僕ですよ」とぼやいた。
「だから僕は頑張ってるんですよ。真面目に勉強して学園で優秀な成績をおさめ、先生に弟子入りして、エリート街道を走って決して無能だなんて思われないように……」
「その結果女の子との接触が無さすぎてこじらせちゃったんですか?」
「こじらせてません!」
 ジーンは拳を振り上げて力説した。
「女の子はお花と砂糖菓子となにか素敵なものでできてるんですよ!」
「女の子の構成要素は血と肉と骨ですよ」
「うそだー!!」
 しかしすぐに打ちのめされて耳を塞いで叫ぶ。本人も多少夢を見過ぎている自覚があるのだろう。しかし認め難いのか弱々しくあらがった。
「お、女の子はなんかいい匂いがして、髪の毛サラサラで、下品なことは言わないんだ」
「何もつけなきゃ普通に汗の匂いですし、髪の毛ぼざぼさの人もいるし、下ネタも言いますよ」
「イヤー!!」
 しかしすぐに返り討ちにあってうずくまる。
「うっうっ、僕の理想の女の子像が汚された」
 ミモポリ ペプチドザはその背中に優しくそっと手を添える。そうして穏やかに諭した。
「よかったですね、早くに目覚められて」
「最悪だ……」
 幽鬼のようにうめくジーンの背中をさすってあげながら、少しやりすぎたか、と反省する。
 まぁ言ったことはすべて事実である。
クロムアントシアニンdhadha

 轟々と風が吹いゴーヤ

 轟々と風が吹いている。
 そこは険しい岩山だった。周囲は鋭く尖った岩ばかりが転がりそのマカ と は合間合間、申し訳程度にわずかに木や草が生えている。
 1亜鉛 の サプリ人の少女がいた。陽の光を反射するハニーブロンドの髪をショートカットに切り揃えサファイアのように青く透き通った瞳を静かに伏せて遠くを見据えている。
 彼女の視線の先は崖の下。そこには数十、下手をし亜鉛 サプリ おすすめたら百を超えてしまいそうな数の猪の姿をした野良精霊がうじゃうじゃといた。
「うえー」
 少女は見た目にそぐわぬうんざりとした声でうめく。
「謎の大繁殖だそうだ。以前の熊の狂化同様の異変だな」
 彼女の背後から現れた美丈夫が腕を組んでそう告げた。そのまま彼女の隣へと並び野良精霊の群れを検分すアントシアニンの効果るように眺める。その視線は険しい。
 よく見ると彼らの背後には教会に所属する騎士と思しき白い軍服を着た人々が控えていた。皆一様に緊張の面持ちで前方の2人を見守っている。
 この場で白い軍服を着ていないのは少女だけだった。
 さらり、と男の藍色の髪が風に流れ、黄金の瞳が横目で彼女のことを捉えた。
「行けるか」
「はい」
 少女はそう明瞭に答えると懐から両手いっぱいの鈴を取り出した。そしておもむろにそれをジャンジャカと目一杯振りながら踊り狂い始める。
 その眼差しはーー本dha epa気だ。
「……何をやっている」
「これは、ですね!勝利の確率を高めるおまじないの舞を舞っています!」
「そうか。それはあとどれくらいかかる?」
「えっと最短であと3分くらい、」
「行ってこい」
「あー!」
 言葉の途中でレオンハルトに背中を蹴飛ばされミモザは声をフェードアウトさせながら崖を滑り落ちていった。
 そのあまりにも無情な行為に周囲は総毛立つが当のミモザはといえばおもむろに自身の精霊を防御形態へと変えるとそのお椀型の結界をまるでそりのように崖へと滑らせその上へと華麗に着地した。そのままスノーボードのように精霊の群れへと向けて崖を滑り降りてゆく。
「すぐにー戻りまーす!」
 そのぞんざいな扱いにあまりにも慣れアントシアニンた様子は周囲の同情を誘うには十分だった。

 その一刻後、ミモザの周囲は猪の遺体だらけとなっていた。血みどろになった服を撫でつけてみるが当然それで血が落ちるわけがない。
「よくやった、ミモザ」
 いつのまにか近くに来ていたレオンハルトがそう言って褒めるようにミモザの肩を叩いた。
「血が付きます」
「ん?ああ、別にいいさ。君がやってなかったら今頃俺がそうなってる」
 そう言うとレオンハルトは遺体の検分に入った。他の騎士達もぞろぞろと現れてにわかに騒がしくなる。
「狂化個体は確認できません」
「大量の巣穴が確認できました。共食いの形跡があることからも急激に増殖が起こったものと思われます」
「……これまでの異常と同じ、か。少しでも不自然な痕跡がないか調べろ。人が踏み入った形跡がないか、他所から群れが移動してきた可能性はないかを特に重点的にな」
「はっ」
 レオンハルトの指示ゴーヤに一度報告に訪れた面々が再び散っていく。
「まぁ、これまで同様、期待はできんがな」
 レオンハルトは難しい顔で腕を組んだ。

 この世界でお金の単位はガルドという。ミモザの感覚では概ね1ガルドは1円と同等くらいだ。
「今回の手伝いの報酬だ」
 そう言ってレオンハルトはミモザに金貨を渡した。渡されたのは小金貨だ。小金貨は一枚約1万ガルドである。それが3枚。3万ガルドだ。
(結構儲かるなぁ)
 命がかかっていると考えると安いが、1時間の労働に対する報酬としては高い。
 ちなみにこれは相場からすると安めである。理由はこれは本来ならレオンハルトに下された任務であり、ミモザは修行の一環として代行しているという立場だからである。レオンハルトは時々こうしてミモザに経験を積ませるためのアルバイトを持って来てくれる。
 このお金は一応教会から、ひいては大元の国からレオンハルトに対して出る予定らしいが、支給されるのはまだ先のためレオンハルトのポケットマネーから先払いでもらっている。
 要するに、これはレオンハルトからのお小遣いである。
「戻るか」
「よろしいのですかdha?」
 まだ探索中の他の騎士達を見てミモザは首を傾げる。それにレオンハルトは肩をすくめてみせた。
「もう一通りは確かめたし仕事はこれだけじゃない。後は彼らに任せて俺は次の仕事にうつる」
「おーおー、じゃあ俺もご一緒させてもらおうかね」
 そこに新たな声が降って湧いた。レオンハルトはその声に眉をひそめる。
「ガブリエル」
「よう、聖騎士様。お前さんが働き者なおかげで俺はサボれて嬉しいぜ」
 ガブリエルと呼ばれた男は30代半ばほどの男だった。濃いブラウンの髪と瞳にやや浅黒い肌をした色男だ。皆と同じ白い騎士装束をやや着崩している。しかしその肩にかけられたマントと勲章が彼が高い地位の人間であることを示していた。
「重役出勤とはさすがだな」
「そうツンケンするなよ。お兄さんにも色々と仕事があってだなぁ……。そっちのお嬢さんが噂のお弟子ちゃんか?」
 彼は口の端だけをあげてニヒルに微笑んだ。
「俺はガブリエル。姓はない。ただのガブリエルだ。これでも教会騎士団団長を務めている」
 手を差し出される。
「よろしくさん」
 握り返した手のひらは厚く、戦士の手をしていた。
ゴーヤポリ ペプチドクロムマカ と は

 その後は仕マカ

 その後は仕事の話になり、ミモザはレオンハルトとアクロムズレンの会話を聞くのみであった。dha epa話題にはやはり野良精霊の異常増殖と狂化の件がのぼったが、現在は小康状態であり以前の同時多発などは起きていないが継続はしていること、原因は相変わらず不明であること、そして人為的に引き起こされていることは状況証拠的にほぼ確定であることがやり取りの中アントシアニンの効果で明かされた。
 最後に「では期待しているぞ!我が国の最強の精霊騎士よ!!」というアズレンの激励を受けて挨拶は終わった。
 そうしてマッスル王子との面会をなんとか無事に終えたレオンハルトとミモザだったが、その2人の間には今、
「……えっと、お食事でもお待ちしましょうか?」
「いやいい」
 微妙な空気が流れていた。
 原因は明白だ。
(好みのタイプ聞かれてとっさにレオン様の名前出しちゃったからなぁ)
 ミモザはぼクロムの効能んやりと斜め上方を見やる。シャンデリアが眩しい。
 レオンハルトの性格的に、あのような場であのような名前の出され方はきっと不愉快だったことだろう。王子の発言からするともしかしたらミモザがエスメラルダと話している間、彼は不機嫌な表情を浮かべていたのかも知れない。
(不機嫌な顔の何が面白いのかはわからないけど…)
 謝罪しなければ、と思いつつもどうにもタイミングが掴めず気まずい沈黙が流れていた。いっそのこと一発殴ってくれたほうが謝りやすいまである。
「ええっと、」
「君は」
 そこでやっとレオンハルトは重い口を開いた。ミモザは開き亜鉛かけた口を閉ざして彼を見上げる。レオンハルトはミモザのことは見ずに、手にしたグラスを眺めていた。
「先ほどの発言だが」
「す、すみませんでした!」
 思わず土下座する勢いで謝る。
「ええと、とっさに思い浮かんだ男性がですね!レオン様で!つい!」
「……そうか」
 恐る恐る見上げる。彼は非常に微妙そうな顔でこちらを見ると、はぁ、と一つため息をついた。
「君のことだから、そんなことだろうとは思ったよ」
「は、はぁ、えっと、次からは同じようなことを聞かれたら、えっと、別の誰かの名前を……」
「それはやめろ」
 強い口調に身をすくめる。ちらりと彼を見るとその目は据わっていた。
「それは、やめなさい」
「……はい」
「俺でいい」
 ふい、とまた顔ごと背けてレオンハルトはグラスを見つめる。
「そういう時に出す名は、俺でいい」
「……わかりました」
 本当はよくわdha epaかっていないがわかったふりをしておく。レオンハルトは「それでいい」と頷いたのできっとそれでいいのだろう。またしばらくの間が空き、どうしようかなぁとミモザがもぞもぞ身じろぎをし始めたあたりで、
「あー、君は」
 再び気まずそうにレオンハルトが口を開いた。
「はい?」
「ああいうのが好みなのか?」
「好み?」
 見つめ合う。先に目を逸らしたのはやはりレオンハルトだった。彼ははぁ、とため息を吐く。
「もういい。少し鷹を撃ちに行ってくる」
「鷹?」
「手洗いだ」
「あー……」
 レオンハルトからグラスを受け取りその後ろ姿を見送る。いつもよりその背筋が若干しょんぼりして見えるのはミモザの気のせいだろうか。ふと途中でレオンハルトは何かを思いついたように足を止め振り返ると「筋肉とか胸とかの餌をぶら下げられてもフラフラついて行くなよ」と念を押した。
「………はい」
 極めて遺憾である。

「ねぇ、あなた」
 レオンハルトがお手洗いに立って少しした頃に彼女は訪れた。
(僕のことを睨んアントシアニンの効果でいた……)
 ピンクブロンドの髪に緑の瞳をした令嬢、アイリーンである。彼女はにっこりと笑顔でミモザに話しかけてきた。
「レオンハルト様からあなたを呼んでくるようにと言われたのだけれど、一緒に来ていただけるかしら?」
(嘘だな)
 とはすぐにわかったが、ここで平民のミモザが伯爵令嬢を無下に扱うわけにもいかないだろう。それに彼女の思惑も気になるところである。
「わかりました」
 ちょっとレオンハルトに言われた「フラフラついて行くなよ」が脳裏をよぎったが、別に餌をぶら下げられたわけじゃないからいいだろうとミモザは1人がてんして、彼女の誘いに応じることに決めた。
dha epa dhadha epaサプリメント マカ

 それは修行後のdha epa dha

 それは修行後のお茶の時間が常習化し、ミモザがレオンハルトのことを愛称マカで呼ぶことが許されるようdhaになった頃に起こった。
「あ、」
「どうした?」
 問いかけるレオンハルトにミモザは困った顔をする。
「ランチボックスを忘れてきました」
 時刻はちょうどお昼時である。昼食の時間をまたぐことがアントシアニンあらかじめわかっていたため用意していたのに、その肝心のランチボックスを丸ごと家に置いてきてしまったのだ。
「仕方がないな。今日は適当にどこかで買うか、外食でもするか」
 頭を掻きながらレオンハルトは提案する。以前の彼ならここは「なら帰るか」となりそうな流れだが、習慣を変えたくない性質なのか、それともミモザとのお茶会もとい食事会にそれなりに意味を見出しているの亜鉛 サプリか判断に悩むところだ。
「いいですよ、すぐに取ってきます。せっかく作ったのにもったいないですし、それに……」
「それに?」
 ミモザは気まずそうに目をそらした。
「この村、田舎なので外食する店ないです」
 悲しい事実だった。しかしレオンハルトは気に留めた風もなく「王都に行けばいいだろう」などと軽く言う。
「いや、遠いじゃないですか」
「レーヴェに乗っていけば1時間てところだな」
「え?」
 思わず驚いてレーヴェを見る。彼は自慢げに胸をそらし、翼を広げてみせた。
「近くないですか?確か半日ほゴーヤどかかると思っていたのですが」
「それは街道を通った場合だな」
「……そんなに差がでるんですか?」
「まずこの村から主要な街道に出るまでに10時間ほどかかる」
「………」
「そこから街道を4時間と言ったところか」
「なんでそんなに街道まで遠いんですか」
「この村に何も特産品も需要もないからだな」
 そのレオンハルトの返答にミモザはうっ、と言葉に詰まる。
「世知辛い話ですね」
 結局それしか言葉を絞り出せなかった。
「まぁ、街道一本通すのに莫大な資金と人手がいるからな。必要のない村を通すより王都に有益な場所を経由するように道を作るのは当然だろう」
「世知辛い話ですねぇ」
 そして無情だ。
 どこの世界でも需要の少ない田舎はマカ と は冷遇されがちらしい。
「まぁ、でも取ってきますよ。僕の家まで1時間かからないので」
 立ち上がりかけたレオンハルトを制してミモザは「すぐ戻るので待っていてください」とお願いした。
 母や姉とレオンハルトが鉢合わせると厄介だからである。 

「はぁっはぁっはぁっ」
 ミモザは息を切らして走っていた。手には先ほど家から持ってきたランチボックスを抱えている。そのせいでいつもよりも走る速度は落ちていた。
「おい、待てよ!ミモザ!!」
 背後から石が飛んできてミモザの頭に当たる。大した大きさではないが、勢いがあり普通に痛い。
 バタバタと4人分の足音がずっと背後をついてきている。
「てめぇ!ふざけんなよ!逃げるな!!」
 いきりたって怒鳴っているのは当然、アベルであった。

 家にランチボックスを取りに行くところまでは良かった。母はまだ帰っていないのかミモザが用意した母親の分のサンドイッチはまだ冷蔵庫の中に残されていた。ミモアントシアニンザはその隣に置かれたランチボックスを持って外へと出た。
 そして出会ってしまったのである。
 下校途中のアベルとその取り巻き3人に。
(迂闊だった)
 ミモザは不登校になってから徹底的に姉やアベル達と生活サイクルを変えて生活している。
 学校の授業が始まる時間に起き出し、授業中に外出を済まし、下校以降は家の外には出ない。
 すべてはこの狭い村でアベル達にうっかり鉢合わせないためである。
 しかし失念していたのだ。
 もうすぐ秋休みだったということを。
 秋は実りの季節である。そしてこのような田舎の村では子どもも立派な戦力だ。そのため小麦や稲を植える時期と収穫の時期は学校は長期休みに入る。手伝いをするためだ。そして秋休みに入る前日は午前授業となる。
 今日がその午前授業の日だった。
 そしてミモザは追いかけられる羽目になったのだ。
ゴーヤゴーヤゴーヤ

 まだ朝の早い時亜鉛

 まだ朝の早い時間、ステラ達は塔を目指して歩いていた。
 何故こんなに朝早dha epa dhaいのか。それは人目を避けるためだ。
 亜鉛 の サプリステラ達は今、警官から目をつけられている。ステラとしてはこそこそとするような真似は業腹だが、またうるさく絡まれるよりは遥かにましだった。
「次は第5のゴーヤ塔ね」
 ステラが歌うように告げる。それに着いて歩いていた面々はそれぞれの反応を返した。
「そうだね」とマシュー。
「楽しみですね」とジーン。
「……………」
 アベルだけは無表情で何も言わなかった。
(困ったわね)
 それにステラは眉を寄せる。
 ステラの『毒』は、何故だかアベルにだけはうまく効かなかったのだ。
 けれど彼は反抗dha epaする気もないらしい。仕方なくステラは彼のことをそのまま連れ歩いていた。
 ステラの新たに目覚めた能力。それは『毒』属性だった。
 ティアラが傷つけた者にその毒は感染する。それはラブドロップと全く同じ効果をもって作用した。
 ステラは自分の肩でくつろぐティアラを見る。その瞳は、青い。
 それはステラが幻術を見せる機能のあるネックレスで隠しているからだった。
(狂化って言うのよね)
 ステラは思い出す。確か前回のミモザがなっていたものだ。
 狂化したミモザは狂化する前よりも確かに使える技が多彩で強くなっていたと記憶していdhaる。
 そう、今回のミモザのように。
(今回も狂化しているのかしら?)
 けれどミモザもチロも目は紅くない。しかし現にステラが幻術で誤魔化しているのだ。ミモザが誤魔化していない保証はない。
 狂化は国や教会で取り締まりの対象になっているが、どうしてだろうとステラは思う。
(こんなに解放的で素晴らしいのに)
 こんなに気分がいいのは久しぶりだ。
 ステラはスキップをするように歩いていた。

 それはあともう少しで塔に着くという頃に起こった。
「………ん?」
 マシューが立ち止まる。
「どうしたの?」
「いや、なんか音が」
 言われて耳をすましてみると、確かに音が聞こえる。本当に微かだが、これはーー
「鈴の音……?亜鉛 サプリ
 四人は顔を見合わせる。
「野良精霊か?」
 アベルの問いに
「いえ、もしかしたら野良精霊に襲われている人が助けを求めているのかも知れません」
 とジーンが応じる。
 確かに盗賊や精霊に襲われた時に助けを求めるためにベルや鈴などを携帯するというやり方は、かなり古い方法だがなくはない。
 最近ではブザーの鳴る魔道具が主流だが、費用を抑えるために鈴を携帯する人も一定数はいた。
「行きましょう」
 ステラは頷くと、そっと茂みの中へと分け入った。

 鈴の音は段々と近づいてきていた。移動している気配がないため、もしかしたらもう持ち主は事切れており鈴だけが風に揺れているのかも知れない、とステラは思う。
(遺品だけでも持ち帰ってあげましょう)
 そう思いながら草をかき分けて進み、
「…………え?」
 ステラはそこで、自分に瓜二つの少女の姿を見た。

 白と藍色のワンピース亜鉛 の サプリが風にひるがえっていた。
 彼女は短い金色の髪を風に揺らしながら、両手に鈴を持って優雅に踊る。くるくると回る動きに合わせて、スカートはふわりと広がり、鈴がしゃらんと涼やかな音を奏でた。
 湖のように静謐な、青い瞳がこちらを見る。
 視線が合った。
「ようこそ」
 ワンピースの少女、ミモザは踊るのをやめてこちらを振り返った。
 その瞳が微笑む。
「引っかかったね、お姉ちゃん」
「………っ!!」
 とっさにステラはレイピアを構える。間髪おかず、氷の破片を放つ。
 しかしそれはミモザに辿り着く前に炎の斬撃に阻まれた。
 ゆっくりと、ミモザの隣に男が立つ。
 藍色の長い豊かな髪、黄金に輝く意志の強い左目、白い軍服を身にまとった美丈夫な男だ。
 鋼のような強さで、彼の視線がこちらを射抜いた。
「レオンハルト様……」
 思わず後退る。しかしその背後で足音がした。振り返るとそこには、
「先生!!」
 ジーンが声を上げる。その言葉の通り、銀色の髪の麗人、フレイヤが立っていた。
「俺もいるぜーぃ」
 へらりと笑ってガブリエルがジェーン亜鉛 サプリを伴ってその隣に並ぶ。
「ジェーンさん、どうして……」
 マシューが苦しそうにうめいた。
 四人は挟み討ちにされていた。
「愛の逃避行はここまでだよ。ここから先は……」
 ミモザは苦笑する。
「反省会、だよ」
 ステラは忌々しげに妹のことを睨んだ。

(さて、)
 ミモザは状況を見回した。
 挟み討ちには成功した。あとは人質達をどう解放するかである。
(とはいえやっぱり、洗脳されてるっぽいな)
 マシューもジーンも、こちらを敵のように睨んでいる。
 ミモザは落ち着かなげにスカートを揺らす。慣れない格好はするものではないな、と思った。
 足がスースーする。
 このワンピースは以前王都に来たばかりの頃、12歳の時にレオンハルトに買ってもらったものである。とはいえ今のミモザでは当然体格が合わず着れなかったのでリメイクしてもらったものだ。
 元々は白いワンピースだったものを、内側に藍色のワンピースを重ねるようなデザインにしてリメイクしてもらっている。藍色のワンピースの部分を今のミモザの体格に合わせているので足りない丈の分、藍色のレースのついたプリーツスカートが白いワンピース部分からはみ出て見え隠れしているのが可愛らしい。肩の部分も今のミモザが着れるように広げるdha epaついでに、縫い目を誤魔化すためか藍色のリボンやコサージュでカバーされていた。
「お姉ちゃん」
 ミモザは声をかける。ステラはきつく睨んできた。
「自首をお勧めするよ」
「自首をしなくちゃいけないような理由はないの」
 ステラは一転して、にこりと微笑む。
「ミモザ、どうしてお姉ちゃんの邪魔をするの?」
「………邪魔じゃないよ。仕事のお手伝い」
「仕事」
「そう、仕事」
 ミモザはなんと言えばいいかを悩む。なんと言っても意味などないのかも知れないが、だからと言って悩まないのは難しい。
「犯罪がいけないのは、それを許しちゃうと社会が混乱するからだよ」
 結局ミモザは月並みな言葉を吐いた。
「例外を出来る限り作らないのは、それをしちゃうと人と社会を信用できなくなっちゃうからなんだよ、お姉ちゃん」
 たぶん伝わらないだろうなと思う。伝わってほしい気持ちはある。
「貴方をルールの例外にする理由はどこにもないんだ」
 けれど虚しさの方がどうしても勝る。この理屈の通じない動物に話しかけているような空虚感はどこからくるのだろうか。
 獰猛な肉食獣に自ら首輪をつけてくれと説得したってきっと無意味なのだ。
「わからないわ」
 ステラは微笑んだ。
(ほら、無意味だった)
 ミモザは力無く笑う。
「可哀想な人がいるの。みんなが幸せになる道がわたしには見えるの。ねぇ、ミモザ」
 ステラは笑う。花のように美しく、完璧な微ゴーヤ笑みだ。
「貴方も知っているでしょう? みんなが幸せに笑っている未来。一度目の人生。すべてが満たされていたの。完璧だった」
 そこで彼女のサファイアの瞳はレオンハルトを見た。
「ある人の死、以外は」
「それって僕のこと?」
 違うとわかっていてあえてミモザは聞いた。苦笑する。きっと彼女には些末ごとだったのだろう。
 ミモザの苦悩も死も。
「ああ、そうだったわね。あなたも死んだんだっけ」
 遠い何かを思い出すように彼女は言った。
「あなたも生きていていいのよ。わたしの邪魔をしなければ」
「……それは無理かな。きっと僕の欲望とお姉ちゃんの欲望は共存できない」
「そう、なら……」
 ステラは残念そうに、けれどあっさりと言った。
「死んで?」
 レイピアを向けられる。ミモザはチロをメイスに変えようとして、
「待ってください」
 横槍が入った。姉妹の青い瞳が声の主を振り返る。それはジーンだった。
 彼はその視線に苦笑すると、「僕に任せてください」とステラを庇うように前に進み出た。
「ジーンくん……」
「ステラさんは危ないので後ろへ」
 彼は紳士的に微笑んだ。そしてミモザへと向き直ると、真っ直ぐに剣を向ける。
「ミモザさん、勝負です」
「……いいでしょう」
 ミモザは不敵に微笑んだ。
「勝てるものなら勝って見せてください」
 ミモザには、対ジーン用の秘策があった。
dha epa dha亜鉛の効果マカ と はクロム

「じゃあ、そろそマカ

「じゃあ、そろそろ塔の最上階へと行きましょうか……」
 なんとか立ち直ゴーヤったジーンは力無くそう言った。まだその亜鉛顔色は青白い。
「ジーン様はもう鍵を見つけられたのですか?」
「え?ええ、先ほど拾いました」
 そう言って彼は、銀の鍵を取り出してみせた。
「……………」
「まぁさすがに金は見つかりませんよ。でも思ったよりすぐに見つかって良かったです」
「すぐにゴーヤ チャンプルー
「ええ、入り口の近くに落ちてまして……」
 にこにこと悪気なく笑うジーン。ミモザは無言で自分のハンカチを取り出すとそこに包んでいた大量の銅の鍵をザーっと地面へとばら撒いた。
「えっ、ミモザさん、随分と大量に……」
 言いかけて気づいたのか彼はそこで言葉を止めた。
「えっと」
「すぐに見つかったんですか」
「え、えーと、どうだったかな」
亜鉛 サプリ おすすめ「入り口の近くで」
「もしかしたら結構込み入ったところにあったかも」
 誤魔化すジーンに、ミモザはにこりと笑いかけた。
「ジーン様、いつ塔にいらしたんですか?」
「えっと、10分、いや15分前かな」
「そうですか、僕は朝の5時頃からいます」
「…………」
「今、何時でしたっけね……」
「え、えーと」
 気まずそうにジーンは言った。
「そろそろ昼食時ですね……」
「ふっ」
 ふっふっふっ、とミモザは笑う。声は笑っているがその表情は半泣きだ。
「ミモザさん……」
 痛ましいものを見る目でジーンはそっと、ミモザの背中に手を添えた。
「大丈夫です。現実をしっかり受け止めまdha epaしょう。怖くないですよ」
「うわーん!!」
 ミモザは再び地に伏した。ジーンは先ほどのミモザのように無言でその背中を慰めるように撫でた。

「行きましょうか……」
「はい……」
 2人してしょんぼりと肩を落として歩く。階段を登ってすぐにその扉はあった。
 鍵をさす。回す。
 かちゃり、と小さな音を立ててその扉は開いた。本来なら初めての塔の攻略に感慨深くなるのかもしれないイベントを2人は無感情に淡々とこなした。
 感動するには2人とも心が疲弊しすぎていた。
 扉の向こうには暗闇が広がり、そこには一つだけ光が浮かんでいた。それはゆっくりとこちらへ近づくと右手の甲へと吸い込まれるように消えた。そこには花のような紋様が現れ、その花弁の内の一枚が銅色に染まった。それ以外の残り6枚の花弁は肌色のままである。マカ
「塔の攻略の証ですね」
 そう言うジーンの手の甲には銀色の花弁が輝いていた。
 それを見てミモザはちっ、と舌打ちをする。
(そうだ、試しに……)
 第一の塔で得られる祝福、『観察』を使用してみる。使うことを意識してジーンのことを見てみると、そこにはゲーム画面で見るような表示が現れた。
『Lv強い MP多い HPまぁまぁ』
「………クソゲーめ」
 ミモザ、ハードモード確定の瞬間であった。

「では、僕はこれで」
 塔から出たところでジーンはそう言って小さく手を振って見せた。
「王都はこっちですよ?」
 来た道を指差して見せるがジーンは首を横に振る。
「先生に念のため塔の周辺を見て回るように言われているんです。野良精霊の異常が塔の周辺で起きると大変ですからね」
 ジーンは明言しなかったがおそらくその『大変』の中には塔の試練を受けに来て被害者が出ると被害者遺族の会との関係がまた悪化しかねないことも含まれているのだろう。
 そ亜鉛ういうことならとミモザも同行しようか迷ったが、ステラと鉢合わせしてしまう危険性を考えるとそれははばかられて結局見送ることにした。
 ただでさえ銀の鍵が見つからなかったせいで予定が押しているのだ。当初の予定通りにいっていればとっくに帰っている時間である。
 ジーンが塔の奥にある森へ立ち去っていくのを見送って、ミモザもさて帰るかと振り返ろうとしたところで、
「あら、ミモザ?」
 嫌な声がした。見たくはなかったが見ないわけにもいかないのでゆっくりと振り返る。
 風に靡くハニーブロンドの髪、星を孕んだサファイアの瞳、透き通った肌に淡いピンクの艶やかな唇。
 にこりと笑って、彼女は言った。
「奇遇ねぇ、こんなところで会うなんて」
「お姉ちゃん……」
 そばにはアベルを伴って、ステラがそこには立っていた。
「あら?」
 何かに気づいたようにステラは目を見張り、そしてそれを見てふふっ、と嬉しそうに笑う。
「ミモザ、もう塔に行ったのね」
 ミモザの右手を見たのだろう。そこにある紋様は塔を攻略した証だ。
「銅だったの?残念だったわね。でも大丈夫よ、ミモザ」
 彼女は微笑んで、慰めるように続ける。
「次ゴーヤの塔ではきっと銀が取れるわ」
「……うん。そうだといいね」
 ゲームではミモザは銅しか取れない定めであった。次も銅の可能性が高い。
 対してステラはあえてハードモードを選択しなければ銀以上は確実だろう。
(不公平だなぁ)
 はぁ、とため息をつく。
 卒業試合以降ステラときちんと顔を合わせたのはこれで2回目だ。1回目は試合後の夕食だ。その時はさすがにステラも無言で非常に気まずかったが、今の様子を見るにどうやら立ち直ったらしい。
 まぁたった一度の負けでへこたれる人間ではないだろうとは思っていたが、それにしてもご機嫌である。
「……何かいいことあったの?」
「わかる?」
 うふふ、とステラは笑うと「ジャーン」と可愛らしいお花柄の巾着袋を取り出して見せた。
「これなーんだ!」
 そう言いながら巾着袋を開けてその中身を手のひらに広げて見せた。
 じゃらじゃらと流れ出てきたそれは大量の魔導石であった。
マカ と はポリ ペプチドマカ と は亜鉛 サプリ

 記者達がすしdha epa dha

 記者達がすし詰め状態になりながらも、その姿を絵と文字に写すためにゴーヤ必死に筆を走らせていたマカ サプリ。その中心にいるのはオルタンシア教皇聖下とレオンハルトである。
 ここは中央教会の中庭である。ミモザはその光景を教会の回廊の柱の陰からこっそりと覗いていた。

 あの時、決着は一瞬でついた。
 ロランの雷とレオンハルトの炎のぶつかっアントシアニンた光が収まると、そこに立っているのはレオンハルトであった。
「うぐぅ……」
 ロランは苦しげにうめきながら、しかしまだ抗おうとなんとか手で地面をつかみ、膝を立てる。
「やめておけ」
 レオンハルトはそんな彼に近づくとその首筋へと刃を突きつけた。
「そのていたらくでは抵抗するだけ無駄だ。貴方には色々と聞きたいことがある。ご同行願おう」
 その瞬間、ロランはニヤリと笑い自分の胸元へと手を伸ばし、ポリ ペプチドーーその手をレオンハルトに蹴りつけられて仰向けに転がった。
 すかさずそれ以上動けないようにレオンハルトがロランのことを押さえ、胸元を探る。
「レオン様」
「どうやら自爆装置のようだな。小規模だが爆発物が仕掛けられている」
 息を呑む。すぐにレオンハルトはその装置の動力と思しき魔導石を取り除き、ロランを昏倒させた。
「よくやった、ミモザ。謎の多い保護研究会の一員を捕獲できたのは大きな収穫だ」
「死傷者はその方を除けば0名です」
「素晴らしい」
 レオンハルトが立ち上がる。褒めるようにミモザの肩をゴーヤ チャンプルー叩いた。ミモザは先ほどまで背にかばっていた3人を振り返る。3人とも惚けたような、本当に終わったのか疑うような表情で立っていた。
 ミモザも同じ気分だった。

 そして本日、いろいろな事について世間への報告が一通り済み、後始末が終わったあとで会談が行われることになった。
 一体誰と誰の会談か。答えは簡単だ。
 教皇聖下ならびにレオンハルトと被害者遺族の会の代表との会談である。
 今はその前座として、彼らはレオンハルトの用意した『ある物』を見に来ていた。
「これは……」
 その『ある物』を見て、ジェーンはそれ以上何も言えずに立ち止まる。
 レオンハルトは風を切って歩くと、その『ある物』の目の前でかしずいた。
 それは慰霊碑だった。巨大な白い大理石が天高く伸び、そこには細アントシアニンの効果かく何事かが刻まれている。よくよく見るとそれは人の名前のようだった。数えきれないほどの数の人の名前が刻まれ、そして少しの空白の後、その勇敢さを讃えると共に安らかな眠りを祈る言葉でその文字列は締め括られていた。
 塔の試練で命を落とした者たちの名前が刻まれているのだ。
 レオンハルトは慰霊碑へと向かい何事かを静かに伝え、そして手に持っていた白百合の花束をそこへ丁寧に供えた。
 そうして立ち上がるとジェーンを振り返る。
「どうかジェーン様もこちらへ。…手を合わせていただけませんか」
「これは……、これは、どういう……」
「申し訳ありません」
 神妙な顔でレオンハルトは謝罪した。
「彼らは俺の救えなかった方々です。魂を鎮めるために、そして俺の力不足を忘れないために、名を刻ませていただきました」
 力無く首を横に振る。
「彼らは本当なら、今頃俺たちの同僚となっていたはずの勇敢な騎士達です」
 その言葉にジェーンは、ハッと顔を上げた。レオンハルトの方を見ると、彼は悔しげな表情を隠すようにうつむく。
マカ サプリ彼らの死を、悔しく思います。もちろんエリザさん、……貴方の娘さんの死も」
「ああ……っ!」
 ぼろぼろとジェーンは涙を流した。その口は小さく動き、「エリザ、エリザ」と娘の名を呼んでいるのがわかる。その泣き崩れる背中をレオンハルトは無言で支えた。
 長い時がかかり、やっとジェーンは顔を上げた。その目は真っ赤に腫れている。その間ずっと急かすこともなく背を支えていたレオンハルトに手を取ってもらい、彼女はやっとのことでその慰霊碑の前へとたどり着いた。そのままゆっくりとうずくまるようにこうべを垂れる。その手は合わされ、祈りを捧げていた。
「ありがとうございます、レオンハルト様」
 やがて、ぽつりと声が落とされた。
「ありがとうございます。ありがとう、ごめんなさい、ごめんなさい……」
 再び泣き崩れるジェーンのことを、報道陣からかばうようにレオンハルトが肩を支え、教会の中へと導いた。
 その様子をしっかりと記者達は絵に描き、文字に起こしているようだった。

「たいしたパフォーマンスだね」
 ふいにミモザに話しかけてくる声があった。振り返った先にいたのは新緑の髪に深い森の緑の瞳を持つ青年、マシューだった。
「ええと…」
「マシューだよ」
「マシュdhaー様」
 ミモザのそんな様子に諦めたようにため息をつき、「別にいいけどね、緊急事態だったし、僕は裏方だし?」とマシューはぶちぶちと言う。
 一通り愚痴って満足したのか、こちらを真っ直ぐに見つめると、彼は頭を下げた。
「申し訳なかった」
「あの…?」
「やり方についての指摘はごもっともだった。あれは最低な行為だ。今後はもうしない」
「してもいいですよ、別に。言ったでしょう、僕も悪いことをする人間です」
「しない。もうそう決めたんだ」
 何かを切り捨てたような顔で彼は言った。何かを失ったようなのに、その表情はどこか清々しい。
「でも塔の運用に関しては、もっと改良できると思ってる。だからこれからも活動はするよ。今度は正攻法で、もっと視野を広げた現実的な案を模索する」
「……はぁ」
 正直それを自分に言われても、とミモザは困る。眉を寄せるミモザのことをマシューは軽く睨んだ。
「でもまぁ、あんたも大概酷かったから、お互い様だとは思ってるよ」
「そうですか」
 はぁ、とマシューはため息をついた。
「あんた、つくづく俺に興味ないのな。まぁいいや」
 じゃあな、とマシューは踵を返す。ジェーンの元に向かうのだろう。彼は作戦参謀のはずだ。
 ああ、と言い忘れたことがあることに気がついて、ミモザは「マシュー様!」と呼び止めた。
「パフォーマンスじゃありませんよ」
「え?」
「さっきの」
 慰霊碑を示してみせる。
「あれは儀式です。ご家族のゴーヤ チャンプルー死に向き合うための」
 本当にあれで向き合えたかどうかは知らないが、それなりに効果のありそうな反応ではあった。
 マシューはミモザの言葉にわずかに目を見張ると、「そうかよ」と頷いた。
「なら、俺もあとで拝んでやってもいいかもな」
「ぜひ、どうぞ」
 ミモザは微笑んだ。
「他の仲間の方々もぜひ、ご一緒にお越しください」
 教会の中庭にある慰霊碑だ。訪れるだけで自然と交流が生まれるだろう。
 人は『顔見知り』には優しくなるものである。
 これは教会と被害者遺族の会が『なあなあな関係』になる足がかりになるだろう。

「なに?」
 その報告にレオンハルトは不機嫌そうに眉をしかめた。報告に来た騎士はびくりと身を震わせる。
「それは確かなのですか?」
「は、はい!」
 オルタンシア教皇の問いかけに、彼は頷く。
「今朝未明、保護研究会過激派の幹部を名乗る老人の姿が、牢の中から忽然と消えました。おそらく……」
 騎士は緊張と畏怖でひりつく口内を少しでも潤すように唾を一つ飲み込んだ。
「脱獄したものと思われます」
 その瞬間放たれたレオンハルトの威圧感と怒気に、年若い騎士は失神してしまいたいと切に願った。
亜鉛の効果dha亜鉛 サプリ おすすめdha